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当社フルボ酸 品質検査結果

1.報告者
国立大学法人神戸大学大学院農学研究科
生命機能科学専攻土壌学分野
教授 藤嶽 暢英

2.分析課題
オバイトラーク 社製フルボ酸の含有量分析ならびに化学構造特性の解析

3.分析期間
2020 年8月 10 日~2021 年3月 31

 

課題1 フルボ酸含有量分析

Ⅰ 試料と方法

  1. 分析試料:Obeitrag 社より送付されたフルボ酸溶液 20 L

 

  1. b) フルボ酸定量法: フルボ酸溶液(以下 OBTG-FA と略称)の一部を TOC計に供し、全溶存炭素量(A)を測定した。ついで、OBTG-FA 溶液の一部を取り、濃硫酸を加えて pH 1 に調整した後に、45μm メンブランフィルターで吸引ろ過した。この濾液に DAX-8 樹脂を加えて 24 時間振とう後,0.5μm のガラスフィルターでろ過した濾液(B)をTOC計に供した。国際腐植物質学会(IHSS)の定義では酸性化した状態で DAX-8 樹脂に吸着した成分を真正 FA としているので、原液を酸性化して吸着しなかった濾液 B 中の炭素量を原液の炭素量から差し引くことで FA 量が算出できる。なお、樹脂を加えた処理区は 5 連用意して定した。次いで、課題 2 に記載した FA 粉末試料の元素分析結果を用いて、FA

炭素量から FA 物質量に換算した。

(以上の方法は日本分析化学会の欧文誌 Analytical Science 誌に掲載済の論文に基づいている:Tsuda et al. (2012) Method for quantitative analysis of aquatic humic substances inclear water. Anal. Sci., 28, 1017-1020)。

 

Ⅱ 結果

  • OBTG-FA 製品中の全炭素濃度

12.84 mgC/L A 液の TOC 平均濃度)

  • OBTG-FA 製品中の FA 炭素濃度

3.65 mgC/L A-B TOC 平均濃度)

  • OBTG-FA 粉末試料の元素分析

C H N O Ash %) = 56.9 : 6.07 : 1.53 : 35.5 : 5.25

Ash 含元素組成の C %) = 56.9×100-5.25/100 53.9

  • OBTG-FA 製品中の FA 物質量

3.65 mgC/L × 100 / 53.9 6.77 mg/L

  • OBTG-FA 製品中の FA 含有%(ただし、炭素濃度として)

3.65 / 12.84 × 100 28.4

 

Ⅲ 結論

製品溶液中に含まれる真正 FA の含量は 0.0007%である。また、製品溶液中に含まれる全炭素が FA であったと仮定すると、そのうちの3割弱が真正 FA である。なお、真正 FA とは国際腐植物質学会(IHSS)の定めた国際法で規定されたFA(狭義)である。学術論文を始め多くの学術的な研究成果は真正 FA を研究材料としたものである。農業資材を含めた市販流通品は酸性で沈殿しないものをFA と称している場合が多い。

 

課題2 OBTG フルボ酸の化学構造特性の解析

Ⅰ 試料と試料調製方法

  1. OBTG-FA 溶液 40 L

 

  1. b) 真正 FA 粉末試料の調製

OBTG-FA 溶液 40L を6M HCl 溶液で pH1に酸性化した。この溶液を DAX8樹脂 300 mL を充填したカラムに通じた。カラム通過液は廃棄し、樹脂に吸着した成分を 0.1M NaOH 溶液にて脱着した。脱着液は直ちに AGMP-50 陽イオン交換樹脂に通じ、脱着液に含まれる FA H+型に交換した。イオン交換樹脂の通過液を凍結乾燥して粉末試料 89.7 mg を得た。

(以上の方法は国際腐植物質学会による IHSS 法に準拠して行なった。腐植物質分析ハンドブック第2版(2019) 農文協の 2. 抽出精製法に詳しい)。

 

  1. c) FA 粉末を重水 NaO 溶液に溶解し,核磁気共鳴分光装置(NMR)に供した。測定各種は 1H 核と 13C 核とした。得られたそれぞれの核種スペクトルを相当す

る官能基の領域ごとに積分定量し,官能基組成を算出した。また,13C NMR による官能基組成%をパラメータとして多変量解析をおこなった。

(以上の方法は腐植物質分析ハンドブック第2版(2019) 農文協の 4-1. 液体 NMR 分析に詳しい)。

 

結果: 図1に OBTG-FA の 13C NMR スペクトルを掲載した。また,このスペクトルから算出した官能基組成%と土壌および河川・湖沼などの水系 FA(当研究室保有のデータ 110 サンプル)の官能基炭素組成%(平均値)を表1にまとめた。図1のスペクトルを見ると、048 ppm の脂肪族性炭素に帰属されるふた山のピーク、65100 ppm の炭水化物の部分構造に帰属されるピーク、130ppm 付近を頂点にしたブロードな芳香族性炭素に帰属されるピーク、180 ppm付近のカルボキシ基炭素に帰属されるピーク、190230 ppm 付近のブロードかつ小さなカルボニル基炭素に帰属されるピークがそれぞれ認められた。これらのピーク形状は、概して土壌や水系の FA を思わせるものであり、20 ppm 付近の脂肪族炭素ピークがやや卓越するものの、経験的判断から天然の FA の範疇に入る。さらに詳しく見ると、陸生の植物由来を思わせるリグニン成分に帰属されるシグナルが認められないことから、土壌の FA よりも水系の FA の特性を示し、水系内で生産される植物プランクトンや藻類を起源とした FA であることが予想される。表1の官能基炭素組成を見ても、アルキル基(脂肪属性炭素)の卓越、炭水化物炭素がやや少ないことが他の FA と比べた場合の特徴として挙げられるが、いずれにしてもスペクトル形状から判断した経験的判断とほぼ一致する。

さらに客観性を担保するため、これまでの FA 保有データ 110 サンプルを対象として官能基炭素組成比の数値をパラメータとして主成分分析を行い、数理統計学的評価に供した。

その結果を図 2 に示した。図中の各点は算出した因子負荷量を元に、水系 FA(朱)、コンポスト FA(緑)、土壌 FA(青)をそれぞれプロットしたものでそれぞれのプロットと同色の楕円で囲んだ領域はグループとしての 68%信頼区間を示している。Test と表記されている紫のプロットが OBTG-FA であり、水系 FA と堆肥 FA の両グループにまたがる性質を持ち、土壌の FA とは明らかに異なる性質を持つことがわかる。ただし、堆肥 FA のサンプル数は 4 サンプルと少ないために、評価から除外するのが望ましいかもしれない。なお、図の X軸(第一主成分)は 0 を境として正の方向にカルボキシ基や芳香族性炭素の含量、負の方向に脂肪族性炭素含量が大きく寄与して各種 FA のプロットを分散させていることを示しており、Y 軸(第二主成分)は正の方向にカルボニル基炭素含量、負の方向に炭水化物由来炭素含量の寄与が強いことを示している。

 

また、第一および第二主成分の寄与率の累積寄与率は 73.2%と,本主成分分析の結果は統計的に信頼できる結果であることを示している。

結論:

  1. OBTG-FA は化学構造特性上、他の自然界に存在する FA と同じ範疇に入る。
  2. OBTG-FA は土壌 FA よりも水系 FA のグループに属する。
  3. OBTG-FA のスペクトル形状からは水系内のプランクトンや藻類に由来して形成された FA であることが予想される。

 

その他:

OBTG-FA が他の FA にない特有の機能を持つか否かは化学構造特性からは判断できないが、一般 FA と比べて特性に大きな違いがないため、その可能性は高くないかもしれない。殺菌等の機能があるとすれば混在する微量有機成分や、真正 FA、あるいは廃棄した非真正 FA 成分の中に混在した無機成分(例えば臭素やヨウ素など)が原因物質であるかもしれない。ただし、臭素やヨウ素がその原因であるとすれば、それらの元素と FA の親和性が高いために複合体を形成して保持しているという点で FA が機能していることも考えられる。